万代・天明町・沼垂 エリア
リノベーション プロジェクトについて
課題先進国日本
その要因は、ひとえに“少子高齢化による人口減少”にあると考えられております。さらに人口減少の影響は、“空き家の増加”という社会現象につながり、市街地を衰退させる最大の地域課題に位置付けられています。
しかし、空き家の増加とは、本当に地域における最大の課題(マイナス要因)なのでしょうか?
我々の活動の原動力は、こんな疑問からはじまりました。
市街地を衰退化させる要因はいろいろです。景気の低迷、土地価格の下落、若年世帯の減少、自治活動の衰退など、多くの要因がからみあいマチの本来の活力が削がれております。
T-Base-Lifeでは、「地域の課題を魅力にかえる実践」をミッションに、地域資源に付加価値を与え、地域再生につなげる活動を展開しております。それは、“空き家や空きスペースを「未利用空間」とみなし、これまでの地域になかった場やサービスをうみだす「余白(可能性)」と捉え、戦略的に未利用空間を活用するスタートアップビジネス”でもあります。
新潟の市内には、流通しない空き家が二万戸ほど存在し、今後さらに増えることが予測されます。T-Base-Lifeはこの傾向をチャンスと捉え、これらの空き家を「不良資産」とみなさずに、新たな地域サービスをうみだす「未利用資源」と解釈します。
そして、未利用資源に付加価値を与え、これまでの地域に足りなかった新たな市場をつくり、「マチの活力をよみがえらせる」ことが、このプロジェクトがめざす未来なのです。
今後の展開
空き家や空きスペースなどの未利用資源に付加価値を与え、地域に足りなかった新たな市場をうみだし、マチの活力をよみがえらせる取り組みとして、T-Base-Lifeは以下の事業に取り組みます。
1.リサーチビジネス
地域を活性化させる未利用空間の使い方を、オーナー・ユーザー・地域住民という3つの視点から地域を分析し、最適な空きスペースの活用をご提案いたします。
空き家の調査・診断、空き家のリノベーション提案、空き家利用のコンサルティング
ユーザー調査・市場調査、地域分析、マーケティング調査、地域経済分析、地域産業調査・分析
2.プラットフォームビジネス
アクセスが悪いなど、資産価値の低い空きスペースを流通させる市場づくりをめざし、路線価に代替される評価手法を開発することで、ユーザー(起業者)・オーナー(物件所有者)・生活者(地域住民)のコンセンサスを高める場や仕組みをご提供します。
Web・アプリ開発、T-Base・Uni-Baseの運営、イベントの企画・運営、会員サービス、チャレンジスペースの提供
3.マッチングビジネス
実験拠点「Uni-Base」は、オーナー・ユーザー・生活者のつながりを高める「生活提案型(モデルルーム)」の機能を設けております。空き物件に関する情報提供、活用方法、体験機会、地域理解などを積極的に提供し、オーナーへの安心感、ユーザーの事業リスクの軽減、生活者の不安解消につなげます。
空き家活用のための相談会・セミナー(弁護士、行政書士、司法書士)、収納アドバイザーによる相談会・セミナー、建築家・インテリアデザイナーによる空間演出相談会
4.マチナカサロン
オフィスをもたずにビジネスをしたい方、起業にむけて仲間を探したい方、アフターファイブや週末に同じ興味をもつ人々に出会いたい方など、こうした要望をもつ人々に開かれたサービスと場所のご提供をいたします。
シンポジウム・セミナーの開催、ワークショップの開催、コワーキングスペースの提供、異業種交流会の開催
5.週末起業塾
副業を考えている方、起業は無理だけど週末の時間を有効活用したい方、現職をリタイアしたあとのセカンドステージを考えている方など、働き方の多様性について学び実践したい方々にむけたノウハウをご提供いたします。
女性の起業・週末起業・チャレンジショップの開催
町の活性化
空き家を通じての
1.地域の課題を魅力にかえる実践とは?
一般論として、“空き家が増え続ける理由は人口が減っているからだ”と思われるかもしれません。しかし増加する最大の理由は、“日本の人口が減少に転じているのに、いまだに世帯数が増加している逆転現象”にこそあります。
人口が減っても世帯数が増えるということは、言い換えれば1世帯あたりの人数が減っているということでもあり、「新規物件の過剰な供給がもたらす社会現象」とみなすことができます。よってT-Base-Lifeでは、世帯数が増加する一方で、それを上回るペースで新築物件が供給されるという、いわば「需要と供給のミスマッチがもたらす社会的傾向」が、空き家率の上昇を招いていると考え、「需要(ユーザー)と供給(スペース)の適切なマッチング」にむけて舵をきりかえ、地域の活力につながる未利用空間の活用手法と仕組みをつくります。
2.新潟市における空き家の現状
新潟市の人口概要をみると、平成17 年の813,847人をピークに平成27年は810,157 人へと減少に転じています。一方の世帯数は、平成7年の264,324世帯から平成27年の321,511世帯へと増加傾向が続いていますが、世帯人員は平成7年の3.01人/世帯から平成27年の2.5/世帯に減少しています。
※1 新潟市 建築部 住環境政策課(2016)「新潟市空家等対策計画」<https://www.city.niigata.lg.jp/shisei/seisaku/seisaku/keikaku/kenchiku/akiyataisaku.files/akiya-honpen_henkou1.pdf>
※1と同様
さらに、平成30年の新潟市における新設住宅着工戸数をみてみると、10月時点で4362戸あり前年比100.1%という現状が確認されます。市内のなかで最も新設住宅着工戸数が高い地区が「中央区」であり、10月時点で1287戸、前年比113.8%という増加傾向が確認できます。
平成25 年の住宅・土地統計調査(総務省)において新潟市は、住宅総数366,440戸に対して空き家数は44,020 戸、空き家率は12.0%という状況が報告されております。この結果は、前回(平成20 年)の調査結果と比較して約2,000 戸増加しており、今後も人口減少や高齢化の進行などによる増加が見込まれています。
また、行政区ごとの空き家数は、中央区が16,710 戸で最も多く、次いで、西区が8,490 戸、東区が7,540 戸となっています。空き家率は、中央区が16.0%で最も高く、次いで、秋葉区11.7%、東区11.5%となっています。
空き家や空きスペースの中には、適切な管理がなされず、防災や衛生、景観などの面で周辺環境に様々な問題を引き起こしている物件が少なからずあります。その際に、こうした未利用空間が増加していく現象は、土地の価値を下落させ、税収の減少を招き、公共サービスの低下につながり、最終的には住みたくないマチへと変貌していきます。
新潟市の中心である中央区は、上述したデータの分析から、市内における空き家率と新設住宅着工戸数の最も高い地域であることから、新潟の経済を牽引する中心市街地の住宅市場には、「需要と供給のミスマッチ」が進行している状況を確認することができます。
※1と同様
※1と同様
3.人口構成の変化がもたらす住宅市場への影響
中心市街地の住宅市場における需要と供給のミスマッチは、「世帯人員」に大きな影響を及ぼします。新潟市の一般世帯における世帯人員別割合をみてみると、1 人世帯の割合は、中央区が46.0%と最も高く、続いて西区34.8%、東区30.5%という結果でした。
※2 新潟市(2017)「平成27年度国勢調査結果 新潟市の結果の概要」
既に日本は、「多死社会」と呼ばれる、出生者数より死亡者数が多くなる社会構造へと移り変わっております。推計によれば、今後も死亡数は増加の一途をたどり、ピークとなる2040年頃には、現在よりも死亡数者数が30万人以上増える見通しです
※3 内閣府(2012)「第1章 第1節 1 (2)将来推計人口でみる50年後の日本」https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2012/zenbun/s1_1_1_02.html
このように、人口構成の変化や各世代のライフスタイルの多様化など、賃貸住宅をめぐる住宅市場の需要には、大きな変化が生じております。単身世帯における高齢者の割合は、今後さらに増えることが予測されるため、賃貸経営を行う上での高齢者の受け入れは、大きな需要を見込める一方で、孤独死という不安も拭えないジレンマを抱えております。
さらに懸念される社会問題として、増加している「空き家」や「空きスペース」に対する犯罪組織の動きがあげられます。不正に入手したクレジットカードを活用し、だまし取った商品の送り先としての空き家・アパート利用が急増しているからです。このような犯罪集団の背後には、国境を越えて暗躍する犯罪グループの存在があり、警察当局としては空き室を悪用する犯罪組織の摘発強化、不動産協会などへの利用制限の働きかけを進めております。
こうした地域外からの予防策も大事ですが、犯罪の温床になる賃貸事業の大半は、地域とのつながりが薄い単身者が集積するエリアであることから、地域の見守りの強化や自治活動の普及など、地域内からの対策がより重要になります。
4.空き家対策にむけた国内の取り組み
デフレ脱却を標榜した日銀の黒田総裁による異次元金融緩和の影響は、一戸建て住宅よりもアパート建築ラッシュに拍車をかけ、需要と供給のミスマッチを拡大させる元凶になっております。
単身者の増加にともなう賃貸アパート需要の高まりは、所有している空き家を解体し、更地にした土地を売却させるインセンティブをもたらしますが、土地に家屋が建っていると固定資産税が原則6分の1になる日本の制度が災いし、更地にしてしまうと固定資産税の減税が適用されなくなり 、“空き家を維持して安い固定資産税を払ったほうが得だ”という考えに収束しがちです。
さらに、賃貸アパートの建設に適した土地は、ある程度のまとまった敷地の大きさと、建設工事の車両が往来できる道路への接道が求められるため、こうした立地性をもった一部の敷地に限定されてしまいます。しかも、アパートの完成とともに、不特定多数の見知らぬ人たちが、顔なじみで構成された地域に転居してくるため、疑心暗鬼になった近隣住民がおこす抗議活動や民事裁判があとを絶ちません。
空き家が増えていく現象に、こうした制度の不の影響があると考えた政府は、平成26 年11 月に「空き家等対策の推進に関する特別措置法」を公布し、平成27 年5月の施行とともに、国・都道府県・市町村に対する空き家等対策の総合的かつ計画的な推進が義務づけられ、「空き家等対策計画」の策定が市町村に託され、空き家対策における実行の担い手が、地域に委ねられる時代的転換がおこりました。
こうした制度の更新が、空き家の流通へのはずみになることを期待する一方で、市内における空き家対策の実情は、必ずしも芳しくはありません。なぜならそこには、流通を促進させる要因への認識のズレがあるからです。それは、流通を阻害する要因が、国の策定した「制度」の中にはなく、住宅に対する日本人の「意識」にあることを意味しています。
日本における戦後の住宅政策は、高度成長期の人口増加にともなう住宅不足に対し、すみやかに大量の住宅を供給しなければならない事情がありました。その結果、新築の住宅が量産されていくプロセスで、住宅建築の質は落ち、住宅寿命は短くなりました。さらに、市街地が外延部にまで広げられたことで、立地条件の良くない住宅も多く供給されてしまいました。
国土交通省の資料によると、住宅がどれだけの期間使われているかの国際比較をみると、日本の滅失した住宅の平均築後年数は約30年であり、アメリカ等と比較して築後年数の短い実態が確認されます。
※4 一般社団法人 産業管理協会 資源・リサイクル促進センター「中学生・高校生・市民のための環境リサイクル学習ホームページ」<http://www.cjc.or.jp/school/d/d-3-1.html>
高い費用をかけて取得した住宅の利用期間が短いという傾向は、住む人にとっての1年あたりの建築費相当の負担が大きくなり、かつ解体のコストも余計にかかるため、それだけ住居費の負担が重くなります。
一方、住宅市場の国際比較をみてみると、日本の住宅市場の取引は、8割以上が新築住宅となっていて、アメリカやイギリスではこの比率が逆転し、住宅市場のおよそ9割が中古住宅という結果を示しております。
※4と同様
こうした背景には、既存住宅の流通といったストックの活用が未成熟なことがあり、結果として住宅取得の選択肢を狭めてしまっている日本の実情があります。したがって今後は、既存住宅の市場価値が適切に評価され、流通をスムーズにするプラットフォームを整備することで、既存住宅の多様なニーズを提供し、住宅に対する日本人の意識改革が求められます。
5.空き家対策にむけた国外の取り組み
空き家を「資源」とし活用し、都市に新たな活動を呼び込むことに成功した都市として、ドイツの「ライプツィヒ」があげられます。ドイツは、産業革命以降人口が急増し、1930年代には70万人を超え、ベルリンに次ぐ人口を有しておりましたが、第二次大戦後、旧東ドイツに組み込まれると徐々に産業が衰え、1989年にベルリンの壁が崩壊すると基幹産業が空洞化し、一気に人口が流出しました。その数は、1990年から10年間で約10万人に及びました。
※5 大谷悠(2017)「WirelessWire News 空き家を「資源」として活用することで都市に新たな活動を呼び込む – ライプツィヒ「ハウスハルテン」」https://wirelesswire.jp/2017/11/62328/
ライプツィヒにおける空き家率は20%弱で、中心市街地に立地するいくつかの地区では50%を超えておりました。空き家の多くは東ドイツ時代からメンテナンスされずに放置され、とても傷みが激しい状態で、欧州の「縮小都市」の代表例として知られるほどでした。このような地域のピンチをチャンスにかえた存在(組織)として、不動産市場から見放された建物を救うべく立ち上がった団体「ハウスハルテン」があげられます。
ハウスハルテンのスローガンは、「利用による保全」で、代表的なプログラムである「家守の家」は、5年間を期限として空き家の所有者に物件を提供してもらい、そこを利用したい人を募集するという暫定利用のシステムを特徴としております。所有者は、利用者に建物を使ってもらうことで物件の維持管理ができ、利用者は家賃なしでの空間利用が可能になるという、所有者と利用者の双方にメリットがうまれる仕組みで、2016年までに17軒が「家守の家」となりました。
歴史的価値のある空き家を破壊から救うこと目的に、ハウスハルテンが仲介する物件は、自分たちで必要な空間をつくるセルフリノベーションが原則です。空間づくりに必要な電動ノコギリ、インパクト、脚立、電源ドラムなどあらゆる工具を無償で貸し出していて、水道や電気工事のノウハウもハウスハルテンのメンバーである元職人から伝授してもらえます。
※5 大谷悠(2017)「WirelessWire News 空き家を「資源」として活用することで都市に新たな活動を呼び込む – ライプツィヒ「ハウスハルテン」」https://wirelesswire.jp/2017/11/62328/
6.マチを活性化させる空き家活用
これまでに述べたように、空き家が増加する本当の理由は、日本の人口が減少しているのに、世帯数が増加しているという逆転現象と、世帯数の増加を上回るペースで新築物件が供給されている、いわば需要と供給のミスマッチという社会現象との複合的関係にあります。
需給のギャップをうみだす要因は、単身世帯の増加に金融緩和が加勢しておこる賃貸アパートの過剰供給にあります。しかも、オーナーとユーザーの利害関係を最優先した賃貸物件は、地域内にトラブルを誘発させる火種になります。そして極めつけは、空き家の流通を促進させる目的で策定された制度改変(空き家等対策の推進に関する特別措置法)が、空き家を流通させる市場形成につながっていないという実情にあります。
したがって、空き家の活性化につながる「需要(ユーザー)と供給(スペース)の適切なマッチング」には、地元住民を交えた地域の魅力づくりにつながる取り組みが不可欠です。それは、地域の多面的な分析によって得られた地域資源(地域のポテンシャル)をもとに、これまでの地域になかった場やサービスをうみだす未利用空間の可能性を探り、戦略的に未利用空間を活用していくための実践的プラットフォーム(体制づくり)が求められます。
プロジェクト参加企業・団体
-
国土交通省
-
ディレクター 新潟県立大学准教授 関谷浩史
-
Shopオーナー&運営代表 天本浩美
-
トクモト建築設計室
-
家具コーディネーター Foresight 鈴木英紀
-
写真 : 村井勇
未来の街が変わる、新潟が変わる
ぜひ応援してください!
●プロジェクトがんばれ応援基金
●ボランティア参加
T-Baseになった場所に元々住んでいたのは、洋服の仕立て屋を営んでいた家族です。
子どもの頃にここに住んでいた方のお話では、お父さんのミシンが2階にあり、
お仕事をされることもあったそうです。近所の人も遊びに来たり、賑わいのある場所だったそうです。
そのSTORYを引き継いで、T-Base-Lifeはものづくりやモノを通じた人とのつながりやコミュニケーション、
自分で作る楽しさを味わうDIY、趣味を通じた仲間作りなど、
人生が豊かになる楽しみを利用者に提供していきたいと考えます。